私の愛しいポリアンナ
「アイツが幼い頃に虐待されてたかもしれない、気の毒な境遇だってのは知ってる。あんたが言ってたからな。だからといって、アイツが犯罪を犯していい理由にはならない」
そう言い切られる。
秋の鋭い眼差しに、みのりの体は一瞬すくむ。
タツヤが、犯罪を起こそうとしたのか。
それを秋が殴って止めた、と。
秋の言い分を信じるならそうなるだろう。
みのりの頭の中に数十日前の光景が流れる。
夜の路地の奥。
制服を着た女の子と一緒にいたタツヤ。
ぐったりとした女の子。
「・・・タツヤは、何をしたんですか」
ようやく口に出せた質問は、情けなく震えていた。
「中学生の女の子を強姦」
ひどく平坦な秋の声が耳に残る。
そんなまさか、と思う。
その一方で、「あぁ、やっぱり」とどこかで納得していた。
タツヤは、本当にみのりの知らないところまで行ってしまっていたのだ。
昔のように、みのりの後についてニコニコ笑っていたタツヤからは、遠く離れてしまった。
小学生の頃の「守られるべき」存在からは、何万光年も先に行ってしまったタツヤ。
それを認めたくなくて、私はいつまでも望遠鏡を覗き込んで。
馬鹿みたいに「昔と同じようにタツヤには笑っていてほしい」なんて思っていたのだ。
もう、タツヤは守られてニコニコしているポリアンナではなかったのに。
人を、傷つける立場にいたというのに。
秋はそんなみのりを見かねてタツヤに会いに行ったのだろう。
望遠鏡で遠くから見ることしかできない意気地なしのみのりを置いて、さっさとロケットでタツヤの元まで行ったのだ。