私の愛しいポリアンナ
意気消沈のみのり。
秋に肩を叩かれハッとする。
「場所移すか」
それだけ言って、ぐいと腕を引かれる。
痛い、と抗議する気力もなかった。
どこへ行くのだろう。
腕を引かれ、なすがままみのりは足を動かす。
秋はみのりの歩幅に合わせてくれているのか、ゆっくりしたペースで歩いていく。
お酒、呑みたいなぁ。
カーッと喉にくるやつ。
呑んで酔っ払って、もう何もかも忘れたい。
みのりは自分の足元、グレーのパンプスを見ながらそう思った。
けれどみのりの願いを裏切り、秋が連れてきたのは個人経営のちんまりしたお好み焼き屋だった。
「お好み焼き」
「広島風のあのてんこ盛り感、良いよな」
「食べたことないです」
「そうか、初めてか」
秋はみのりの腕を掴んだまま、店に入っていく。
店内に入った瞬間、濃厚なソースの香りが鼻につく。
今はあんまり重ためのもの食べたい気分じゃないんだけどなぁ。
そう思いながらも、みのりはしっかりと豚玉と海鮮お好み焼きを頼んでいた。