私の愛しいポリアンナ




みのりが意地になって言い張れば、どうしようもないと悟ったのか、秋はお好み焼きを分け始める。
豪快に二分割。
ジュージューパチパチと、油がはねる音が食欲をそそる。

絶対に、タツヤのそばに居続けてやる。
私はそう固く胸に誓った。
自分でも意地になっているのはわかったが、秋のいいなりになるのはどうにも面白くなかった。

タツヤが私の想像の何万光年先を行っていようが、構うものか。
タツヤはタツヤだ。
私に手袋を借りて、笑っていた時代が確かにあったのだ。
構ってほしいと望むなら、私はそれを叶えよう。

犯罪者だからなんだ。
世界には73億人もいるのだから、犯罪者だっているだろう。
73億人もいれば、バカみたいな人生を歩む人だっているだろう。

タツヤに、会いに行こう。
もぐもぐと豚玉を食べながら、みのりは息巻いていた。

芹沢みのりはこれまでの二十数年、ずっとタツヤを中心に生きていた。
これはもう病気のようなもので、やめようと思って止められるものではない。
また、秋のように「やめろ」と止めてくれる人がいても、そう簡単には変えられないほど凝り固まってしまったみのりの生き方なのだ。
だからこそ、この状況でもタツヤのことしか考えられない。
「なんで秋はここまで構うのだろうか」という疑問はみのりの頭の片隅にも存在しなかった。

秋も秋で、「なんでこんなにこの女に構ってしまうのだろうか」と言う疑問は頭に浮かばなかった。
みのりのことは鹿川を知る手っ取り早い方法として利用した女、という印象しかなかったからだ。





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