私の愛しいポリアンナ
「ここから先は許可書がないと入れられません」
その言葉を繰り返すだけで、「知り合いがいるんです」とのみのりの言葉に耳も貸さない。
とにかく、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なようだ。
車を半ば無理やり降ろされたみのりは内心憤慨していた。
怒るみのりに険しい顔の警官。
上からそう指示されているので、特例でも認められません、と彼は言った。
向こうも雇われの身でしかないので、彼個人の裁量でどうにかなることではないのはわかる。
わかるが、どうにもこう一辺倒に突っぱねられるのは気分が良くなかった。
なんで、秋もこの警官も私の邪魔をするのだろう。
そんな自分勝手な思いが大人気なく胸に溢れる。
なんなのよ。
頭に血が上ったみのりが、そう口を開こうとした瞬間。
「それくらいにしておけ」
少し低めの、今一番聞きたくない人物の声が聞こえた。
まさか来ているとは思わなかった。
予想外の事態にみのりの思考が一瞬止まる。
カチンと固まったみのりに、追い打ちをかけるように秋は声をかける。
「鹿川は今では立派な危険地帯だ。そこに一般人を入れないのが彼の仕事だ」
そう言うや否や、ぐいと腕を引かれる。
みのりに向き合っていた警官は「設楽さん」とこぼした。
やはり出資者として秋の顔は通っているのだろう。
「面倒をかけた」
それだけ言うと秋はみのりの腕を引いてその場を後にした。
ブスッとした顔でみのりはなすがままついていく。