私の愛しいポリアンナ
「で、タツヤはどうなります?」
「今頃、検察に身柄を引き渡されているだろう」
「そういうことじゃなくて、これからどこの刑務所に入るかとか」
「そんなもの知らんよ」
けんもほろろに老人に切り捨てられ、みのりは唇を噛む。
知らんって、そんな。
だいたい私はタツヤの情報が聞けるというから秋についてここまで来たのだ。
まさか、あの場を切り抜けるために私を騙したのか?
そんな疑惑から、隣の運転席に座る秋をキッと睨みつける。
秋は肩をすくめ、ミラーで老人に目配せする。
「タツヤから伝言を預かっておる」
「伝言?」
「あぁ」
禁煙を言い渡され落ち着かないのか。
老人は貧乏ゆすりをしながらみのりと目を合わせた。
タツヤからの伝言。
なんなのだろう。
私からタツヤに連絡することはあっても、タツヤから私に何か伝えることはほとんどなかった。
というか、一回もなかったかもしれない。
珍しい事態に目を瞬いている間に、老人は口を開いた。
「本当は、金を盗っていた、と」
一瞬、みのりの息が止まった。
ひゅっと、喉からかすれた音が出る。
まただ。
また、私のわからないタツヤが、何万光年先から顔をのぞかせた。
秋はみのりの状態に気付いたが、何も言わず傍観していた。
「伝えればわかる、と言われていたが、伝わったか?」
「・・・はい」
重々しい息とともに何とか絞り出した声は何とも弱々しいものだった。