私の愛しいポリアンナ
暗い山道を抜け、田園風景が視界をすり抜けていく。
だんだんと都会の明かりが近づいてくる。
車が走り始めてからゆうに30分は経った頃。
とうとう沈黙に痺れを切らしてみのりは口を開いた。
「聞かないんですか?」
「タツヤの伝言のことか」
「はい」
「予想できるからな。『本当は金を盗んでいた』なんて、あんたに嘘ついて金をスってたってことだろ」
涼しい顔で視線は前のまま秋に言われた。
一瞬でもこちらに目をやってくれてもいいのに。
わき見運転は危ないが、こんな夜中の郊外だからそのくらいの余裕はあるのに。
みのりがブーたれた顔をしていると、煩わしそうな秋の声が隣から降ってきた。
「聞いてほしいんだな」
「はい。何があったのって、聞いてください」
正直にそういえば、かすかに秋が笑った気配がした。
「はいはい。で、何があったんだ?」
「高校生の頃のことです」
「また、なっがい昔話かよ」
「女の愚痴は長くてもしっかり聞いてください。モテませんよ」
「あいにく、かまってくれる女性には困ったことはない」
「でしょうね」
そうでしょうとも、とみのりはげんなりしながらも話を続けた。
タツヤが高校生の頃。
祖母の年金と生活保護のみでは家計が立ち行かなくなったらしく、タツヤはコンビニでバイトを始めた。
みのりも何度か遊びに行った。