抜けていて、ゆるくて、どこかぼやっとしている女の子。そう演じている理由はひとつ、好きな男ーーポリアンナ症候群のタツヤの好みに合わせるためだ。
そんな馬鹿な男に執着したみのりと、そんなみのりを放っておけないエリート男子・秋。2人の関係性は日本最後のスラム街と呼ばれる鹿川と、そこに住むタツヤを巡って次第に色濃くなっていく。
世の中の「当たり前」から除外された人たちが住む鹿川の描写は、まるで異世界を覗いているような気分でした。生まれた環境、不自由な体、他とは違う性癖、居場所のない人たちの集合体。普通とはいったい何なのかと錯乱するくらいに。
「愛とは自己の喪失」ーーこの物語を一言で表すのなら私はこの言葉を推薦したい。秋がみのりに手を差し伸べてくれてよかった、ポリアンナの裏側に気づけてよかった。
私の拙い言葉では到底伝えきれない圧巻の衝撃作です。是非ご一読ください。