愛しのニャンコ
その頃他の病室では淡い紫色のドレスを着た婦人がニャンコの手を取り涙を浮かべていた。

『智紀さんこんなになって…』

すると直ぐ後ろに立っているグレーのスーツを着た若い男が婦人に声を掛けた。

『加奈子様余り無理をなさらないで下さい。』

『分かっているわ。けど智紀さんが無事で何よりだわ。』

『そうですね。旦那様もさぞかしお喜びでしょう。』

『そうね。息子夫婦が亡くなり智紀さんさぞかし寂しかったでしょうに……。』
そんな話をしているとベッドに横たわるニャンコが目を覚ました。

夫婦はグレイシーキャット社お祖父様の妹松原加奈子そして横に居る若い男は秘書の川田だ。

ニャンコは目を覚ますと、加奈子の姿を見ると、悲しそうに見つめ言った。

『ごめんなさい』と。


加奈子は智紀の手を握りしめた。

『みんな心配していたのよ!』

川田が側に行き智紀に言った。

『一緒に居た方は無事に目を覚まされたようですよ。ただ、……肩を強く打ち骨折したようです。 』

それを聞いた智紀は驚いたように加奈子に言った。

『伯母様側に行きたいのですが宜しいですか?』

加奈子は優しく、首を縦に振った。

智紀は、加奈子の体に抱きつき『ありがとう伯母様。』
そう言って病室を後にした。


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