お前が好きすぎて、マジやばい。
適当に手を引いて地元を歩いていく…
知愛に地元を紹介していくうちに、懐かしい思い出が蘇る。
嫌な思い出だけじゃない。
本当に嫌なら、とっくに離れているだろう。
高校も地元にしなかったはずだ。
「学校の近くに、こんな素敵な場所あったんだねー」
知愛が足を止めたのは、街全体を見渡せる高台に着いた時だ。
高校の少し先に、長い長い坂道がありそこを登ってこの景色を見る人は今はなかなかいない。
俺もここに来るのは、ガキの頃以来。
家族がまだ3人だった頃だっけ。
もう見ることはないだろうと思っていたけど…
「この高校を選んで良かった」
『ん?』
「だって、この高校選んでなきゃ凰己くんに出会えてない。
恋も…知らないままだった。
初恋が凰己くんで良かったよ!」
…バカなやつ
嬉しすぎ…
知愛をぎゅっと後から抱きしめる…
『ったく。どうなってもしらねーよ』
「うん」
『お前は俺だけ、見とけばいい』
「へへっ、私、凰己くんが好きすぎて、マジやばいっす!」
『バーカ。襲うぞ』
「へ!?」
好きすぎて、たまらない。
いつまでも、ぎゅっとしていたい。
ふと、街を見下ろす…
くだらないこんな街でも、居てよかった。
ちょっとでもそう思えたのは、知愛のおかげ。