空まち理論
~きまぐれ天気~
6月7日 15:57分

「帰りました~。」
「おかえり~真心ちゃん。」

キッチンから寮母さんが顔をのぞかせてくれる。本当に彼女は良い人だ。そ彼女と初対面で会う人は彼女が32歳だなんておもわないだろう。もちろんいい意味で。

2階に上がり、自分の部屋へと足を進める。「MACO]と書かれたネームプレートのドアをあけ、部屋に入る。その瞬間、

「真心ちゃ~ん。」

聞きなれた声が階段から聞こえる。ドタドタと音をさせこちら側に近づいてくる。

「やっほ、翔。」
「おじゃましま~す。」

許可もとらず、堂々と部屋に入ってくる。まるでここが自分の部屋かのように。

(まぁ、気にするタイプでもないし…、いっか)

「真心ちゃん、帰ってくるのはやいんだね~。」
「私、天文部で、部活あるの土日ぐらいだから。」
「へぇ~そうなんだ。」

そういって、部屋の隅に置いてある小さな本棚の前に彼は移動した。

「なんで星をすきになったの?」

そうえばなんだっけ、と頭をフル回転させるが、どうしても思い出せない。

「なんでだっけ…。」
「えぇ~忘れちゃったの~。」

そう言って彼は笑う。けれど、本棚に再び視線を戻した彼の背中は悲しそうだった。



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