初恋のクローバー

これから始まる大会は、高校陸上競技者にとって1番大事な舞台。


全国高等学校対校陸上競技選手権大会、通称、インターハイ。


今日私たちがここに来たのは、短距離の予選を勝ち抜いたヒロを応援するため。


｢トラック……懐かしいな｣


｢それにしても……｣


目の前の光景に意識せず思いを馳せていると、リカが苦笑いを浮かべながら口を開いた。


｢せっかくの幼なじみの大舞台なのに決勝だけ見にくるなんて、本当にそれでよかったの？｣


｢いいに決まってるじゃん。ヒロだってやる気出してたみたいだし、むしろこれでよかったでしょ｣


｢応援しにきて欲しいなら、地区も県も突破して決勝まで残ってみせろ……だっけ？｣


｢完璧無茶振りだったのに、そんなに風結ちゃんに応援して欲しかったんだねぇ〜｣


｢たかが幼なじみの応援にどんだけ期待してんだって話だよねー｣


｢たかが幼なじみ……｣


｢ヒロくん、もっとグイグイいかないとダメなんだよぉ〜……｣


｢ん？なに？｣


突然ボソッと呟いた2人の言葉を聞き返せば、
2人は｢｢なんでもない｣｣と口を揃えて答えた。


｢風結！｣