初恋のクローバー


ずっと、彼女の背中を追いかけてきた。


彼女のように走りたいと、そう思ってきた。


でも再会を果たした彼女は、もう前を走っていなかった。


堂々とただ自分の気持ちを伝えてくれた彼女の背中は、苦しみという重りを背負っていた。


そんな彼女が今また、前を走ろうとしてくれている。


重りを砕いた彼女が俺のために、その背中を見せてくれようとしている。


それがどうして、俺が頑張る意味にならないのだろうか。


どうして、俺が今の自分の全てをかける理由にならないのだろうか。


溢れ出る感情をそのままに手紙を見つめていれば、布団の上に置いた封筒に手が触れた。


「………?」


普通なら平らなはずのその封筒に違和感を感じて持ち上げてみると、何かが中からコロンと姿を現した。


「っ!、」


それは、彼女がずっと持ち続けていたもの。


俺と彼女を繋げてくれた、大切なもの。


「……決めた」


葉を1つだけ持ったクローバーを手に握れば、それは俺に新たな決心を与えてくれる。


「嫌いになんて絶対にならない。ちゃんと見てるよ。……頑張って、風結」


同じ空の下にいる彼女を想いながら、俺は心からの言葉を口にした。

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