初恋のクローバー


『……?』


『私たちずっと、興野先輩のことを先輩たちから聞いてたんです!』


『え…?』


私のことを……?


辺りを見渡せば、3年の先輩たちや同級生の微笑む姿が目に映った。


『走るのがすごく速くて、人一倍頑張る自慢の仲間なんだ、って先輩たち言ってました!


今は陸上から離れちゃってるけどいつか絶対に戻ってくるから、その時は興野先輩の走りを見せてもらいなって!』


『っ!、』


仲間への思いが、目頭を熱くさせる。


一瞬にして溢れてきたしずくは、太陽の光を浴びながら土に染み込んでいった。


『ふ……っ、う………』


ずっと、見てくれていた。


ずっと、待っていてくれた。


みんなの応援を疎ましく思っていた私を、
勝手に逃げ出して迷惑をかけていた私を、


それでも待ち続けてくれていた。


歪む視界の中で仲間の姿を見つければ、みんなは優しい笑みで私を見る。


『待ってたよ』


『ほんと、戻ってくるの遅いよ!』


『待ちくたびれた』


『…っ、』


『あーあー、どんだけ泣くんだよ』


『ヒロ……』


一瞬呆れ顔を見せたヒロも、次には嬉しそうに微笑んだ。


『おかえり、風結』


『っ…!』


その言葉が、ちゃんとここに私の居場所があったことを教えてくれる。


みんながずっと、私を待っていてくれたことを教えてくれる。


『っ…ただいま!…みんな…っ、ありがとう────』


みんなのおかげで、私は久しぶりに心からの笑顔を仲間に見せることができた。

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