初恋のクローバー
「ん?あ、ヒロ」
会話の合間に聞き慣れた声がして後ろを振り返ると、ウィンドブレーカーを着たヒロがこっちに向かってきていた。
「来てくれたんだな」
「ヒロなら決勝まで残るってわかってたし最初から来るつもりではあったよ。
思ったより来るのに時間かかって準決は見れなかったけど」
「風結……」
「それより、なんでここにいるの?アップしなくていいわけ?」
「ん、あぁ……」
笑顔で前の席に座ったヒロに尋ねれば、ヒロは途端に真剣な顔つきで前を見つめる。
「見ておきたいやつがいるんだよ。
今年突然現れて、県総体で1位をとったやつ。
向こうの知り合いが凄いって言ってたからさ。
まぁ、予選も準決もギリギリだったらしいけど」
「へぇ、どこの人?」
「青森。俺らと同じ2年だって」
「青森かぁ〜。埼玉からだと結構離れてるね」
「800の中距離に出るらしいんだけど……お、
ちょうど走るところだな」
「無名でいきなり決勝まで残るなんて凄いね。どの人……………、、」
その瞬間、私の視界には彼しか入らなかった。