初恋のクローバー
「また、和哉くんの走りがみれるんだね……」
「うん…でも今日は、風結の応援に来たんだ」
「あ、そうだ……どうして大会が今日あることを知ってるの?日程は県で違うし、場所だって……」
ふと思った疑問を口にすれば、彼は少し微笑んで教えてくれた。
「ガクが、前のインターハイの時にヒロくんと知り合ってたみたいで」
「えっ?ヒロとガクくんが!?」
前のインターハイって、もしかして私と和哉くんが出会ったあの日…?
でも、あんなに正反対な感じの2人なのに……。
「ヒロくんの方から、ガクに声をかけたらしいんだ。なんか、ガクが言うには俺のことを聞き出そうとしてたみたいで……」
「和哉くんのことを…?」
あ、もしかしてあの時、私が急に和哉くんに会いに行くとか言って消えちゃったから、気になったのかな……いや、それはないか。
ヒロのことだから、どうせ興味本位とかなんだろうな。
「半ば無理やり番号交換されてそのままだったらしいんだけど、この前ヒロくんから連絡があったみたいで……それが今日の大会のことだったんだ」
「え?」
ヒロが日程と会場を教えたってこと?
「風結に会いに来い、って……大会の日程と一緒にそれだけ送られてきたんだ。ガクはそれが俺あてだって気づいたみたいで、教えてくれた」
「そ、だったんだ……」
確かに部に戻ってからしばらく経った日に、ヒロから和哉くんとのことを聞かれたことはあった。
でも全てを話すことはできなくて、私は「大丈夫」とだけ答えたはず。
ヒロ、私が和哉くんと気まずくなってること
気づいてたんだ……。
幼なじみの優しさを感じれば、嬉しさと感謝の気持ちが湧いてくる。
「……ありがと、ヒロ」
会場内にいるであろう幼なじみに、私は小さくお礼を送った。