初恋のクローバー
「うぅ〜……暑いねぇ…」
まばゆい太陽が辺り一面を照りつける中、私は心からの声をそのまま口に出す。
もちろん独り言ではなく、その言葉は隣に立つ彼に向けたもの。
「そうだね。観客席も、あんなに盛り上がってたら誰か倒れちゃうんじゃないかな」
「そうならないためにも、適度に水分をとって欲しいものだね」
「はは、そうだね」
こんなくだらない会話にも付き合ってくれる彼は相変わらず優しいと思う。
でもそんな話を交わせるほど近い距離にいれることが、今はとても嬉しい。
「……約束、守れたね」
いつか交わした、2人の約束。
その舞台が今、目の前に広がっている。
「うん。結構ギリギリで焦ったけど」
「私もギリギリだった」
お互いにそんなことを言って苦笑していれば、会場のアナウンスが前の競技が終わったことを知らせた。
「…私が先に決勝だね」
「うん、そのあとすぐに俺が決勝……今までにないくらい緊張してるよ」
「あははっ、お守りは?」
「持ってるよ」
「なら大丈夫!それを持ってれば、緊張なんて吹き飛ばせるから!」
「あはは、うん。そうだね」
「じゃあ、行こっか!」
「うん、行こう。終わったらクレープでも食べに行こうか」
「えっ、ほんと!?すっごい楽しみ!」
「あはは。じゃあそんな楽しい時間を過ごすためにも、絶対に優勝しないとだね」
「うん!これに誓って、絶対に優勝するっ!」
「俺も、これに誓うよ。一緒に優勝して笑い合おう」
それは前に交わしたものよりも、さらなる高みへと続く約束。
会場に足を踏み入れる2つの影が、どちらからともなく手を繋いだ。