初恋のクローバー
思えば最初から、私たちを繋いでくれていたのかもしれない。
彼と出会ったこと。
彼が私を知っていたこと。
私が彼に憧れたこと。
彼が私に憧れてくれたこと。
私が彼を好きになったこと。
彼が私を好きになってくれたこと。
彼が私を救ってくれたこと。
私が彼を救えたこと。
その全てが、「運命」なんていう言葉を信じてみたくなるような、奇跡の連続だった。
でもそんな奇跡が起きるきっかけになってくれたのは、全部あのお守りだった。
緑が綺麗に咲いた、一つ葉のクローバー。
たった1枚のその葉の中には、沢山の想いが込められている。
何度も、目の前にそびえ立つ困難に打ち勝ってきた。
彼に出会って、止まっていたはずの私の時間が動き出した。
彼と2人で、新しい未来を切り開いてきた。
彼に出会って、私は変わることができた。
嫌いになりかけていた自分を、またいいと思えるようになった。
静かにゆっくりと、けれど確かに進み始めた私の時間は、彼と混ざりあって「初恋」という気持ちを教えてくれた。
誰かを好きになることが、こんなにも自分に力を与えてくれる。
好きな人のそばで笑っていられることが、何よりも嬉しいと思う。
私に初めての気持ちを沢山くれた彼が今、私の隣で笑ってくれている。
それだけできっともう、私は自分の道を歩んでいける。
「和哉くん」
「なに?風結」
愛しい彼の名前を呼べば、当たり前のように振り向いてくれる。
それがどれだけ幸せなことなのかを思いながら。
「大好きだよっ!」
これからもずっと、君に初恋をしていけますように。
重なった2人の手の中に見えたあの一つ葉のクローバーに、私は密かにそう願うのだった。
END