初恋のクローバー
「……………」
表彰式が終わっても、俺はしばらくトラックに釘付けになっていた。
「はぁ……なんていうか、凄かったな」
隣で父さんが関心の息をもらす。
「中学生なのにあんな走りができるなんて、先が楽しみな子だなぁ。和哉もそう思うだろ?」
「………………」
「和哉……?どうかしたか?」
「……父さん」
「ん?」
「ごめん。俺、行ってくる」
言いながら席を立てば、父さんは「へ?」と理解が追いついていない頭を傾げる。
「すぐ戻ってくるから!」
「えっ、和哉?お、おいっ、行くってどこにだー!?」
慌てたように声を上げる父さんに耳を貸すこともせず、俺は次の瞬間、観客席を背に走り出していた。