初恋のクローバー
「速いやつらに囲まれれば埋もれる、か。結果は残念だったけど、インハイ決勝まで残れるだけでも充分すげーよな。ま、俺はもちろん優勝狙っていくけど」
歓声でいっぱいになる観客席の中、得意げな顔で話すヒロに、リカとミヨは苦笑を浮かべる。
「凄い自信だね」
「それで優勝できなかったら、かっこ悪いよねぇ〜」
「なっ!…絶対に優勝してやるし!!」
「………ちがう」
「「「え?」」」
談笑していた3人の視線が、一斉に私に集まった。
「あんなのっ、あの人の走りじゃない!」
私は俯いていた顔を上げて、勢いよくその場に立つ。
「えっ?ちょ、風結!?」
「急にどうしたのぉ〜!?」
「おいっ、風結!どこ行くんだよ!?」
「ごめんっ!私、あの人に会いに行ってくる!」
私はひと言だけ告げると、3人の静止も聞かずに観覧席から走り出した。