初恋のクローバー
「おかしいっ……おかしいよっ…!」
酸素を欲しがって上下する肩で、必死にあの姿を探していく。
あんなの、あの人の走りじゃない。
彼の走りは、絶対にもっと速い。
走る前の彼の姿に、私は確かに、確信に近いものを抱いた。
彼には陸上の才能がある。
彼の全身から溢れ出す圧倒的な才能を、私は確かに感じ取ったんだ。
私は彼に、魅せられた。
「────っ!いた!」
見つけたのは、人通りのないひっそりとした通路。
遠目で見てわかったそのシルエットに近付いて行くと、下を向く彼の姿が目に入った。
「────……!!」