初恋のクローバー
「……っ、う…………っ」
彼は、声を押し殺すように、泣いていた。
整った顔が、苦しそうに歪む。
悔しそうに握った手の甲で涙を拭った彼を、
私はきっと忘れないだろう。
そして同時に、私は理解した。
あぁ、この人は圧倒的な才能だけじゃない。
その才能に劣らないだけの、努力をしてきた人なんだ。
ずっと、頑張り続けてきた人なんだ。
垂れた前髪から時折見えるその悔しそうな瞳が、彼の全てをしっかりと物語っていた。
「あの……っ!!」
「……え?」
私は気づけば、彼の目の前までせまって心の内を吐き出していた。