初恋のクローバー


「風結、ここのところずっと恋愛したいって言ってたし、彼に一目惚れでもしたのかなって思って」


「一目惚れ……」


窓の外に広がるグラウンドを眺めながら、あの日のことを思い出す。


「あの日……初めて彼を見た瞬間に、感動、みたいなのはしたよ」


「「感動……?」」


ハテナマークを浮かべて首を傾げる2人に、私はクスッと微笑してから続けた。


「多分、私の理想だったんだ。性別は違うけど、私と同じ800メートルをやってて……あの人はきっと、私がしたかった走りをするんだろうって……だから、目にした時は感動した。
まぁ、実際は全然だったけどね」


「風結……」


「風結ちゃん……」


「あ、ダメダメ!そんな顔させたいわけじゃないんだから!ねっ?」


悲しそうな顔を見せた2人に慌てて笑顔をつくれば、2人も笑顔で返してくれる。


「電話、くるといいね」


「絶対くるって思ってるといいんだよぉ〜」


「うん、ありがとっ」


あの人から電話がきますよーに……。


2人の優しさを嬉しく思いながら、私はスマホに彼の声を願うのだった。

< 21 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop