初恋のクローバー
「風結、ここのところずっと恋愛したいって言ってたし、彼に一目惚れでもしたのかなって思って」
「一目惚れ……」
窓の外に広がるグラウンドを眺めながら、あの日のことを思い出す。
「あの日……初めて彼を見た瞬間に、感動、みたいなのはしたよ」
「「感動……?」」
ハテナマークを浮かべて首を傾げる2人に、私はクスッと微笑してから続けた。
「多分、私の理想だったんだ。性別は違うけど、私と同じ800メートルをやってて……あの人はきっと、私がしたかった走りをするんだろうって……だから、目にした時は感動した。
まぁ、実際は全然だったけどね」
「風結……」
「風結ちゃん……」
「あ、ダメダメ!そんな顔させたいわけじゃないんだから!ねっ?」
悲しそうな顔を見せた2人に慌てて笑顔をつくれば、2人も笑顔で返してくれる。
「電話、くるといいね」
「絶対くるって思ってるといいんだよぉ〜」
「うん、ありがとっ」
あの人から電話がきますよーに……。
2人の優しさを嬉しく思いながら、私はスマホに彼の声を願うのだった。