初恋のクローバー


「電話……しようか迷ったんだけど、あの時の君は必死だったから。頑張ってくれたんだろうなと思って………」


「あ、うん……はは」


改めてしっかりと聞いた彼の声に私は、あの時の自分は本当に勢いだけだったんだな、と苦笑をこぼす。


「……電話、本当にありがとう。友達に、走り方のダメ出しだけで失礼なやつだと思われてるって言われて、ちょっと不安になってたから凄い嬉しい」


「失礼なんて…!君がああ言ってくれて、むしろ力が湧いてきたんだ。お礼を言うのはこっちだよ」


「あはは、よかった……あ、そういえば私、あなたの名前聞いてない!」


ふと思い出したことを口にすれば、彼もそうだったというような反応をしてから答えてくれる。


「廣谷(ヒロタニ)……廣谷和哉」


「廣谷和哉………じゃあ、和哉くんだね!」


「かっ……!?」


「私のことは、風結でいいよ!」


「えっ!?えっと………ふ、……風結……」


「…………ふふっ」


「え、な、なに…?」


「んーん!なんでもないっ。ふふっ」


私は緩む頬を抑えるように、クッションに顔を埋めた。


どうしてだろう。


彼に名前を呼ばれるだけで、胸がポカポカと暖かくなる。


彼の穏やかな声を聞くだけで、とても心地よい気持ちになる。


こんなこと、生まれて初めてだ。

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