初恋のクローバー
「あ、もう遅い時間だね。ごめん、夜遅くに電話して……」
彼の言葉に壁時計を見ると、針は10時を過ぎている。
「ううん、全然大丈夫だよ。ねぇ、和哉くん……また、電話してくれる?私、和哉くんともっと話したい」
「うん、もちろん。あ、でも俺いつも部活してるから、結構遅くなると思うけど」
「全然へーき!じゃあ、電話待ってるね。私はいつでも空いてるから!」
「ははっ、わかった。……じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ……...、」
電話を切るのがなぜだか惜しくて、向こうが切るまで数秒待った。
「…………ふふっ」
私はスマホを脇に置くと、座っていた体勢を崩してベッドに横になる。
「いつもなら眠くなるのに、今日は寝れそうにないや。………優しい声だったなぁ」
さっきまで耳元で聞こえていたあの声を思い出すと、なぜだか心が踊ってしまう。
「…………ふふっ……」
私はそのまま、高揚する胸の落ち着きを取り戻すことがしばらくできなかった。