初恋のクローバー
「あ、風結!こっちこっち」
「ごめん、遅れたっ!」
まだ夏の蒸し暑さが残る土曜日。
待ち合わせていたカフェに着くと、奥でリカが手招きするのが目に入った。
「ごめんっ!出る時に親に洗い物頼まれちゃって……」
「気にしない気にしない。遅れたって言っても少しだけだし」
「リカ…ありがと〜」
笑顔で許してくれるリカの向かいに座れば、
リカの隣に座っていたミヨが目を輝かせてこっちを見てくる。
「風結ちゃん、今日可愛いねぇ〜」
「あぁ、ほんと。風結の私服姿なんて久しぶりに見たかも」
「ずっと部活一筋だったから、これからはいっぱいオシャレしようと思って」
「いいねぇ〜、似合ってるよぉ〜」
「へへっ、ありがと」
「じゃあ、お昼頼もうか。さっきミヨとメニュー見てたんだけど、結構いいもの揃ってるよ」
「わっ、ほんとだ!デザートも美味しそう!」
「そういえば風結ちゃん、何か話したいことがあったんじゃなかったぁ〜?」
ランチメニューを笑顔で眺めていると、ミヨが昨日のグループトークを思い出したように口を開いた。
「あ、うん……でも長くなるから、先にお昼食べてからにしよっ!」
昨日の和哉くんとの電話を思い出して言えば、2人はお互いに顔を見合わせてから頷く。
「いいよ。なんか面白そうな話みたいだし、ゆっくり聞きたい」
「風結ちゃんの緩んだ顔の原因は、デザートでも食べながら聞き出そぉ〜」
「ゆるっ……!?うそ、そんな顔してた!?」
「「してた」」
クスクスと笑いながらハモった2人に、私は気をつけようと思いながらメニューに目を通した。