初恋のクローバー
「部活お疲れ様。今日は何したの?」
日が完全に沈み切った夜。
もう習慣になっている電話に耳を傾ければ、電話越しで彼の優しい声が届いてくる。
「いつもと同じ。ほとんど体作りに費やしたよ」
「ははっ、私が中学生の時の陸上部のコーチも、体作りばっかりやってたよ」
「体作り重視で走りは二の次なんて、珍しい練習だよね」
「そうだね。でも、体作りをしっかりすることで走るための体が出来上がるから。和哉くんのコーチはちゃんとみんなのことを考えてる人なんだね」
「うん……そうだね」
記憶を思い返すような声の和哉くんに、私は置いてあったクッションをぎゅっと抱き寄せた。
「そういえばいつも思ってたんだけど」
「ん?なーに?」
「風結って、陸上に詳しいよね?もしかして経験者?」
「え…………っと……、」
実は去年までやっていたなんて、言いたくなかった。
経験者だと言ったら多分、どうしてやめたのか聞かれるだろうから。
やめた原因がかっこ悪くて、和哉くんには知られたくなかった。
「ぜっ、全然、違うよ!中学の時の友達が色々
愚痴ってたのを覚えてるだけ!」
だから私は、嘘をついた。