初恋のクローバー


「風結………」


名前を口にするだけで、自然と笑顔になってしまう。


名前を口にするだけで、胸に暖かいものが溢れてくる。


同じような気持ちを、俺は抱いたことがある。


俺が中学生の時に出会った、彼女。


「興野、風結………」


インターハイで彼女の名前を聞いた時に、引っかかるものがあった。


確信は持てていないけど、なんとなく彼女のような気がするんだ。


「……って、ダメだ。今は試合の方に集中しないと……はぁ………」


もう何度目かのため息は、真っ青な空に溶けていく。


もうすぐ試合だ。


そう考えるだけで、指先が震え出す。


「はは……ほんと、情けない………」


自分の手を見つめながら自嘲の笑みをこぼしていればその時、誰かが名前を呼ぶような小さな声が耳に届いた。


「…………?」


俯かせていた顔を上げれば、誰かがこっちに向かってくる姿が目に入る。


「………………え、……えっ!?」


「和哉くん!!」


「ふ、風結……?なんで……」


目の前に現れたのは、さっきまで俺の思考を占領していた彼女だった。

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