初恋のクローバー
「本当はテストなんてなくても会いたいんだけど、何かご褒美があった方が風結もテスト頑張れて一石二鳥かなって思って」
「う、うん!私っ、頑張るから!絶対にいい点取って和哉くんに会いに行くっ!」
「えっ…そこは待ってる、じゃないの?
俺が風結に会いにそっちに行くよ」
「ううん、私がそっちに行く!私、和哉くんの走ってるところがまた見たいのっ」
興奮のままに心のうちを伝えれば、彼はまた優しく笑った。
「俺の走ってるところなんて見ても面白くないよ?」
「そんなことないよ。和哉くんの走りは、私の
憧れだから……」
「憧れ……?」
不思議そうな声を出した彼に、私はあの日の彼を思い出しながら笑みをこぼす。
「……私の、理想だったの。ずっと和哉くんみたいに走りたいと思ってた。だから和哉くんの走りを見ると、すっごく嬉しくなるんだ」
「…………」
「和哉くん?」
「……風結だって、俺の憧れだよ」
「えっ?」
蚊の鳴くような声で呟かれた彼の言葉が聞き取れなくて首をかしげながら返せば、彼は「なんでもない」とだけ口にした。