初恋のクローバー
それに気づいたのは、放課後の教室だった。
「ふぃ~、疲れた…。リカもミヨも余裕そうな笑顔で彼氏と遊び行くんだから。薄情者」
勉強の休憩で一息つこうと思って手を止めた時に、そういえばとスマホを取り出した。
「最近、和哉くんと話してないなぁ……」
発信履歴を開いてみれば、画面いっぱいに彼の名前が表示される。
けれどそのすべてが、電話が繋がったことを残していない。
「最後に話したのはテストの話をしたあの日、か……」
中間テストで全体順位50位以内をとると約束したあのあと。
宣言した通り勉強し始めた私は、わからない問題を教えてもらうために和哉くんに何度か電話をしていた。
けれど、その電話が彼に繋がることは1回もなかった。
「……多分、向こうもテストとか部活で忙しいんだよね」
胸につかえる微かな違和感を拭おうとして、そうであってほしいという願いをわざと口に出す。
「……よし!テストはもう来週だし、もーちょっと勉強しますか」
ラストスパート頑張って、テストが終わったらまた電話しよう!
グラウンドの声が届いてくる教室で、私はまた教科書を開いた。