初恋のクローバー
「そこまで。後ろからプリント集めて各自終了するように」
チャイムの音とともに、張り詰めていた空気が窓を開けたように一気に入れ替わる。
「だあぁぁ……疲れたぁ~」
開放感に溢れる教室の中、机に突っ伏して肩の力を抜いていると、前に座る2人がこっちを振り返った。
「お疲れ。今回は頑張ってたね」
「風結ちゃんが2週間も前からコツコツ勉強してて、びっくりしたよぉ~」
「へへっ……約束、したからね」
頬杖をついてグラウンドを眺めながら、あの日の会話を思い出す。
『来月のテストで風結がいい点を取れたら、会おうか』
あの電話から2週間以上がたった。
「……電話、してみようかな」
ポツリと呟いたあと、机にかけていたカバンからスマホを取り出して画面を開く。
表示された彼の名前に微かに高鳴る鼓動を落ち着けながら、発信ボタンを押した。
「……………」
3回、4回とコール音が流れていく。
そしてしばらくすると、
「────おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません……」
「…………」
私は通話終了ボタンを押してから、じっとスマホを眺めた。