初恋のクローバー
「心配、だな……」
口をついて出た言葉は、私の心をさらに騒がせる。
「っ…、だいじょーぶだいじょーぶ。きっとテストとか部活で忙しいだけ」
1週間前と同じようなことを言って、自分の呼吸を整えた。
「風結、大丈夫?」
「彼と何かあったのぉ~?」
「っ、あ……ううん!」
完全に自分の思考におちいっていた私を心配そうに見つめていた2人に、私は慌てて首を振る。
「なんでもないよっ。それより、さっきの古典のテストなんかやらかした気がする~!」
「あはは。風結、前のテストの時もそんなこと言ってたよね」
「あの時は確か、解答欄が1個ずつズレてたんだよねぇ~」
「うぐっ……私の黒歴史を掘り返さないでください!」
「「あはは」」
「もぉ~……」
和らいだ空気に安堵の息をこぼしてから、私は記憶の中の和哉くんを思い出す。
「……声が聞きたいな」
こんなに気がかりなのに。
簡単に会いに行けないこの距離を、この時ほどねたましく感じたことは今までなかった。
初めて、彼に会えないことを悔しく感じた。
会いたい。
和哉くんに会って、彼の声を聞きたい。
まるで何かの禁断症状のように、私はただそれだけを天に願っていた。