初恋のクローバー
「じゃあ、番号順に取りにこーい」
テスト最終日から1週間。
帰りのホームルームで先生が間延びした声を響かせた。
「うわっ!俺、順位下がった!!」
「俺、前より15位上がってる!すごくね!?」
「ああー…数学がなきゃ俺、絶対いいとこまでいってたー」
番号の早い男子たちが、自分の結果を見てそれぞれ違う感情を帯びた声を上げていく。
「あっ!私、上がってる!」
「あたしも上がってるよ!勉強頑張ってよかったぁ~!」
次第に増える女子の声を聞きながら、私は自分の席を立った。
ドクン…ドクン…
先生の立つ教卓に向かう自分の1歩ずつが、まるで心臓と繋がっているように私の心拍数を上げていく。
テストの結果でこんなに緊張するなんて、1年の最初の頃以来かな……。
「つぎー、興野」
「はい……」
目の前に差し出されたA4サイズの用紙の裏面をチラリと見やってから、私は自分の手を伸ばした。
「……興野」
「?は、はい…」
「お前は勉強もやればできるやつだったんだな」
「へ……?」
「この調子で次も期待してるからな」
「……………、!」
「あ、おいっ」
一瞬の思考停止におちいったあと、私は奪い取るように先生から用紙を受け取って自分の席に戻る。
もしかして、結構いいとこまでいってる…?
1度深く呼吸をしてから、私はたたんでいた用紙を開いた。