初恋のクローバー
「おねぇちゃん、何かあったの?」
女の子は手鏡をしまうと、クリクリの丸い瞳でまっすぐに私を見上げて言った。
可愛い子だなぁ……。
「うーん、そうだなぁ……ある人の力になってあげられなくて悲しくなっちゃった、かな」
「……?」
私の言葉を聞いてキョトンとする女の子に、私は「ちょっと難しかったね」と言って笑ってみせる。
「うーんとね……その人は今、あることをする意味を見つけられてないの。
私はその人にそれをする意味を持ってほしいんだけど、それがないから悲しいんだ」
「………」
「あはは、やっぱ難しいよね」
「ないなら、つくっちゃえばいいんだよっ!」
「……え?」
「おねぇちゃんがその人に、意味をあげればいいんだよっ!」
「私が、走る意味を……?」
「うんっ!」
「……………」
目の前の名前も知らない女の子が、道しるべを作ってくれたような気がした。
彼の心に続く長い道のりを、照らしてくれたような気がした。
「……うん、そうだね。意味がないなら、私が意味を作ればいい」
「うんっ!」
「でも、和哉くんにはもうしばらく会えないし、今から行っても気まずいから…うーん、どうしよう……」
「おねぇちゃんっ」
「ん?」
「このおかばんに、いいものがはいってるよっ!」
「いいもの?」
「これっ!」
「…!確かにこれはいいものだねっ!」
自分のカバンからいいものを取り出して満面の笑みを見せた女の子に、私も納得の笑みを浮かべたのだった。