初恋のクローバー


彼女のそんな顔を見ていたくなくて冗談まじりに言葉を紡いだら、彼女はさらに顔を歪めてしまった。


そして俺も、つい本音をもらしてしまった。


彼女は、俺にはまだ先があると言った。
俺には未来があると言った。


可能性が少なくても、それを理由に今できることを諦めるのは違うと言った。


確かにそうかもしれない。
その数パーセントを目指すべきなのかもしれない。


でも今の俺には、それをする勇気がなかった。


今、走りたい。
今、自分で走りたい。


でもそのためには、覚悟が必要だった。


先の見えない未来のために、自分の全てをかけなければいけなかった。


頑張って、頑張って、頑張っても、
それが報われるかは、わからない。


報われなかった時に、自分がどうなってしまうのかわからない。


先が見えない未来が、怖い。


そう思ったら、全てをかける意味がわからなくなった。


思わず口にしたその言葉を、風結が理解したのかはわからない。


けれど彼女に笑って見せた時、彼女はただ泣きながら首を振った。


その姿が作られた俺の笑顔の奥を見ているようで、俺は押し込めたはずの苦しい気持ちを隠すことができなくなった。

< 95 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop