初恋のクローバー
彼女の顔が、見れなかった。
彼女の瞳に映る自分が、とても情けなく見えて耐えられなかった。
だからそのまま離れようとした。
別れの挨拶を交わして、これでまたしばらく会えなくなるんだって思っていた。
そうしたら一瞬のあとに、ベッドに置いていた手の甲にぬくもりを感じた。
びっくりしすぎて、思わず肩を揺らしてしまった。
彼女の温かな温度が、冷えきった俺の手を温めてくれた。
『私ね、中間テストで48位だったの。すごいでしょ?
だから和哉くんに会ったら、頑張ったご褒美に手を繋ぎたいなって思ってたの。
…叶ってよかった』
少し悲しそうに、でも本当に嬉しそうな笑顔で笑う彼女が、とても綺麗に見えた。
本当に、約束を守ってくれたんだ。
頑張ってくれたんだ。
それが嬉しくて、それまであった他の感情と混ざって複雑な気持ちができあがった。
2度目の別れのあとに離れた手が、寂しさを覚えた。
彼女が冷えきった体温を全て持っていってくれたかのように、俺の手は温かさだけを帯びていた。
それがトリガーの引き金のように、複雑な気持ちと一気に混ざりあって、彼女の姿が見えなくなった瞬間に溢れ出た。