初恋のクローバー
「こんなに泣いたの、いつぶりだろう……」
初めて風結に出会ったあのインターハイの日だって、こんなに泣かなかった。
「はぁ……」
外気にさらしても治らなそうな腫れぼったい目元をさらに冷やそうと、自分の手を当ててみる。
「はは……あったかい………」
自分の温度なのか、彼女がわけてくれた温度なのか。
不確かなその温かさに、なぜかまた涙がこぼれそうになった。
「……っ、まずいなぁ…これ、今日は治らないかも……」
大きめな独り言を呟いてそのまま目元を抑えていると、誰かがドアを叩く音が届いてきた。
「起きてるか?俺だけど」
「ガク……いいよ、入ってきて」
急いで抑えていた手で目元を拭ってから、俺はガクを中に促す。
「元気……ではないな」
「……相変わらず、よく気づくね」
「それで気づかない方がおかしいだろ」
「はは、そんなひどいんだ……座らないの?」
いつもはすぐに椅子に座るはずのガクを不思議に思って尋ねれば、ガクはカバンを肩にかけ直して首を振った。
「いや、一応確認のために来ただけだから」
「確認?……あ、風結のこと?」
「あぁ。まぁ、お前の顔を見ればすぐにわかることだったな」
「あはは……本当、容赦ないよね」
「返せる体力があるなら大丈夫だ。じゃ、俺は帰るから」
「うん、またね」
「……あ、そうだ。忘れてた」
「…?」
「これ」
「え…?」
差し出されたのは、1枚の可愛らしい封筒。
薄ピンクの下地にクマのプリントがされたそれは、明らかに子供が使うようなものだった。