包み愛~あなたの胸で眠らせて~
招き入れてくれた広海くんに促され、2人掛けのソファに浅く腰かけて、背筋を伸ばす。それから部屋を見渡す。前にも入って思ったけど、やっぱりうちとは間取りが違う。

まずリビングがうちよりも広い。他の部屋がどのくらいの広さか分からないけど、一人で住むには広いように思える。最初から一人なのだろうか。


「はい、どうぞ。紗世、なんでそんな緊張した顔しているの? 来るの初めてじゃないだろ? もっと楽にしてよ」

「そうなんだけど。あ、これ良かったら食べて」

「ありがとう。えっ、こんなにたくさん?」

「うん、どれにしようか見ていたらどれも美味しそうで迷っちゃった。で、つい買いすぎちゃったの。やっぱり多すぎだよね」


渡したコンビニのビニール袋の中にはいろんな種類のチョコが10個入っている。定番の板チョコから期間限定のチョコまで。

どういうチョコが好みか分からないから、悩みに悩んだ結果だ。

広海くんは袋の中を見て丸くさせていた目を細め、口元を緩ませる。優しい微笑みに肩の力が抜ける。今回はちゃんと受け取ってくれた。

それだけで嬉しい。
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