包み愛~あなたの胸で眠らせて~
ぎゅっと、抱きしめて
広海くんと一緒に出社するようになって、三日が過ぎた。今日も部屋のドアを開けると「おはよう」とにこやかな笑顔で私を見る広海くんがいる。

「おはよう」と返して、エレベーターに乗る。


「午後から出張だっけ?」

「一時過ぎの新幹線だから、昼休みには出るよ。お土産、何か欲しいのある?」

「んー、明日は直帰だったよね? 肉まん食べたいな」

「あー、551の? 了解」


広海くんは今日の午後から明日まで関西出張。だから、明日の朝は一人での出勤になる。

土曜日に広海くんの話を聞いて、私たちの距離は縮まったけど、それは子供の頃一緒に登下校して、一緒に遊んだのと同じくらいの距離。

誰かに話したら、抱き締め合うのだからそれなりの関係だと思われてしまうかもしれない。

だけど、子供の頃も私たちは抱き合ったことがある。広海くんは繊細な子で、臆病な部分があった。それで、不安そうにしていた時に母親が子供をあやすみたいな感じで『大丈夫』と抱き締めたのだった。

子供と大人では意味合いが違うかもしれないが、今の私たちにとっては変わらないように思う。

恋愛感情があるのかと問われたら、あるとハッキリ言えないからだ。
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