包み愛~あなたの胸で眠らせて~
池永さんの左目下にほくろがあった。池永さんが広海くんだというのなら、写真の広海くんにも同じほくろがあるはずだ。

仕事終わったら、実家に帰って写真を見よう。

本人に聞けばいいのだろうけど、まだそこまでの勇気はない。もう少し時間が経てば聞けるようになるかもしれないけど、ずっとモヤモヤしたままではいたくない。

先に食堂から出ていく池永さんの後ろ姿を他に特徴はないかなとそっと眺めたけど、なかった。


この日の夜、私は実家に帰った。

「ただいまー」

「おかえり、平日に帰ってくるなんて珍しいわね」

「うん。ちょっと写真が見たくなって」

「写真?」

首を傾げる母に頷いて、自分の部屋に入る。

棚から一冊のアルバムを取り出して、ベッドに座ってめくる。何枚かめくったところでドアがノックされ、返事をすると母が入ってきた。

「ご飯、食べる? あら、懐かしいわね。小学校あがった頃?」

「うん。ねえ、虫眼鏡かなにかない?」

「虫眼鏡? 湊人の机の引き出しに入っていたかなー。よく覚えていないけど」
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