包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「こうやってアイスを食べるんじゃなくて、ビールを飲むなんてさ、俺たちも大人になったよね」

「そうだね。不思議な感じもするけど、嬉しいよね、子供じゃないからなんでも出来る」

「なんでも?」

「え、うん」


広海くんがちょっと意地悪な感じで笑うから、戸惑った。なんでもって、いけないことを言ってしまった?

広海くんはコップを片手に持ち、空いている手で私の髪の毛を撫でながら微笑む。私は両手でコップを持っていた。

至近距離で見つめてくる広海くんに胸の鼓動が高鳴っていく。


「なんでもしたいと思うけど、いい?」


なんでもしたいからいい?とはどういう意味?

キョトンとする私に広海くんはまた意味深な笑みを浮かべた。それから自分のコップをテーブルに置き、私のコップも取り上げて、同じように置く。

より距離を縮めて、私の頬を撫でた。


「嫌だと言わないなら、いいと判断するけど」

そんな前置きをしてから、私の前髪をあげた。私の額にキスをし、唇にもキスをした。そっと触れるだけのキスだったけど、優しく温かかった。
< 194 / 211 >

この作品をシェア

pagetop