包み愛~あなたの胸で眠らせて~
直海くんは私たちより二つ年上だった。年が近かったからか仲の良い兄弟で、私も二人に混じって遊んだ。


「どこに引っ越したかは知らないんだっけ?」

「うん。お母さんたちはお母さんの実家にとりあえず行くとは話していたけど、広海くんは分からないわね」

「離婚の原因は?」

「それは分からない。夫婦の問題だし、聞けなかった。仲の良いご夫婦に見えたんだけどね。分からないものよね」


母はわりと広海くんのお母さんと仲良くしていて、一緒に買い物に出掛けたりもしていた。それでも深いところまでは話していなかったし、引っ越してからは全然連絡を取っていないらしい。

事情が事情だから仕方がないのだろう。


母に泊まっていけば?と言われたが、まだ明日も仕事だから帰ると出てきた。昔広海くんちだった家は、今違う家族が住んでいる。

あそこが広海くんの部屋だったな。

二階の灯りのついていない部屋を見上げてから、私は歩いた。バッグの中には広海くんと一緒に写っている写真を一枚入れてある。

本人に見せたら驚くかな。どんな反応をするだろう。
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