包み愛~あなたの胸で眠らせて~
それにしても、やっと逢えたことが本当に嬉しい。ずっとまた会いたいと思っていた人に会えたことは嬉しい。

しかも、同じマンションで同じ職場だ。この偶然は運命なのかとつい浮かれてしまう。

軽い足取りでマンションに入り、いつものようにポストを覗いていると、足音が近付いてきて止まった。

振り向くと、そこには広海くん。


「お、お疲れ様です」


ずっと考えていた人が現れて思わず動揺してしまい、声が上擦る。


「お疲れ様です」

「あの! もしかして、今帰りですか? 遅いんですね」

「そうですね。今日は忙しかったので」


彼も同じようにポストを確認して、まだ話したくて止まっている私を置いて先に歩いていく。


「帰らないんですか?」

「あ、いえ。帰ります!」


エレベーターのボタンを押した彼は動かない私を不思議そうに見た。ハッとして小走りで私もエレベーターの前に行く。

話をするなら今がいい機会かもしれない。


「片瀬さんはいつからここに住んでいるんですか?」

「去年からです」

「そうなんですね。どうぞ」

「ありがとうございます」
< 21 / 211 >

この作品をシェア

pagetop