包み愛~あなたの胸で眠らせて~
いい機会だと思っても10階まで何分もかからないから、ほんの少しの会話で到着してしまう。先に降りるように促された。
ゆっくりと進む私を後から降りた彼は長い足で抜かして先に歩いていく。
そして、私の部屋の前を通りすぎる。
あ、待って……。
行ってしまう彼に手を伸ばすが全然届かない。
「ああ!」
「えっ?」
引き止めるようと発した大きな声に広海くんは振り返る。
が、待ってはくれなかった。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい……」
それだけ言って、奥まで歩いて行ってしまった。だから、私も同じ言葉を返すしかなかった。
さっきまで浮かれていた気持ちが沈んでいく。いざとなると臆病になってしまう自分がいる。言えない自分が悪いのだけど、言える空気にしてくれない広海くんも悪い。
広海くんを悪くしてしまうのは勝手な八つ当たりだけれど。
「おかえりー」
「わっ、湊人。帰ってたのね」
「気付いてなかったの? 玄関も電気ついてただろ?」
「ああ……うん、そうだったね」
ゆっくりと進む私を後から降りた彼は長い足で抜かして先に歩いていく。
そして、私の部屋の前を通りすぎる。
あ、待って……。
行ってしまう彼に手を伸ばすが全然届かない。
「ああ!」
「えっ?」
引き止めるようと発した大きな声に広海くんは振り返る。
が、待ってはくれなかった。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい……」
それだけ言って、奥まで歩いて行ってしまった。だから、私も同じ言葉を返すしかなかった。
さっきまで浮かれていた気持ちが沈んでいく。いざとなると臆病になってしまう自分がいる。言えない自分が悪いのだけど、言える空気にしてくれない広海くんも悪い。
広海くんを悪くしてしまうのは勝手な八つ当たりだけれど。
「おかえりー」
「わっ、湊人。帰ってたのね」
「気付いてなかったの? 玄関も電気ついてただろ?」
「ああ……うん、そうだったね」