包み愛~あなたの胸で眠らせて~
玄関を振り返ると、電気は消えていた。無意識に消したようだ。

「平日にあっち行くなんて、珍しいね。何かあった?」

湊人も母と同じことを言う。答えを言う前に、持ち帰った写真を湊人に見せる。

写真を手にした湊人は、不思議そうに首を傾げた。

「それを取ってきたの」

「この男の子、誰?」

「覚えてない? 広海くんなんだけど」

「広海くん? あー、あの広海くん! 紗世ちゃんと同い年で引っ越してしまった広海くん?」

湊人は私のことを子供の頃から『紗世ちゃん』と呼んでいる。広海くんのことも、私が呼んでいるのと同じように呼んでいた。

だけど、その頃の湊人は幼稚園児だったから、ほとんど記憶に残っていなかったようだ。

記憶に残っているのは、広海くんがいなくなって泣いていた私だという。

「でも、なんで今頃になってその写真を出してきたの?」

「湊人は、ここの階の奥の部屋に住んでいる池永さんを知っている?」

「池永さん? 聞いたことない名前だし、奥の部屋の人も知らないな。で、その人が何? どう話が繋がるのさ?」

「うん、実はその人が広海くんなんじゃないかと思うんだよね」
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