包み愛~あなたの胸で眠らせて~
池永さんの体調が気になり、何度か気にして彼を見た。だが、普段と変わった様子は見られなかった。

やはり気のせいだったのかな。しかし、安心してはいけなかった。


歓迎会の会場は、居酒屋にある個室で八人用の長テーブルが四卓配置されていた。

主役は新入社員の堀田くんだが、ついでの私も堀田くんと同じ主役にさせられてしまい、彼の隣に座った。堀田くんの前には部長、私の前には課長が座る。

気になる池永さんの姿を探すと、彼は別のテーブルの端に座っていて遠い。主役席だと移動するのが難しそう。今日こそ話ができるかと思ったのに、そう簡単にはいかないようだ。

部長の挨拶、乾杯が終わり、和やかに進められていく。部長と課長は、堀田くんにいろいろと話し掛けていた。堀田くんは緊張しながらもちゃんと答えている。

私も一応その会話に参加していたが、会話は右から左へと流れるだけで何ひとつ頭の中に留まらない。

居心地の悪さを感じていたら「ちょっと失礼」と部長がトイレに立ち、少しすると課長も同じように立った。その後二人ともここには戻らなく、他のテーブルに腰を下ろしていた。

部屋の中を見回すと、最初にいた席から移動している人も多く、あちこちで盛り上がっていた。
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