包み愛～あなたの胸で眠らせて～
「で、片瀬さんはどうなんですか？」

「え、私？ 考えたことないけど、特にいないかな」

「そうなんですね！ じゃあ、さりげなく私をアピールしてください。よろしくお願いします」


星野さんは私の手を強く握って、真っ直ぐな瞳で訴えてきた。その気迫に押される形で縦に首を振ってしまう。

私の返事に安心したからか軽やかに星野さんは戻っていく。それと反対に私の足取りは重かった。お願いしますと頼まれてもどうアピールすればいいのかと考えると頭が痛くなってくる。

かわいいとかいい子だとか言えばいいのかな。でも、そんなことを何の脈絡もなしに伝えても何事かと思われるだろうし、心に響かないだろう。

話の中でそういう流れになったら言えばいいのかな。

いけない、そんなことを考えるよりもやることがある。まずは仕事。まだ今日はコーヒーを出すことくらいしかやっていない。

だから、余計なことを考えている場合ではない。星野さんにとっては余計なことではなく、大事なことかもしれないけれど。

だけど、そのことで私が悩んでも仕方がないと気持ちを切り替え、業務に戻った。
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