包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「じゃあ、私との時間を作ってくれない? 池永くんの都合に合わせるし、もちろん出張から帰ってからでいいから。出来れば、夜がいいなー」

「あー、考えさせてください。今はちょっと忙しいので考えている余裕がなくて」

「うんうん。明日から出張だものね。忙しいのは分かっているのよ。落ち着くまで待っているから、ちゃんと考えてね! また夕方に来るからね」


物分かりのいい人ふうな返事をしてから、肩を叩いて騒々しい人は出ていった。広海くんは、からだ全体を使って大きくため息を吐く。

諦めの悪い人にどう対処したらいいのか、困っているのが傍から見ても分かる。なんとかしてあげられたらいいのだけど、私が出る幕ではない。


「今の総務の方ですよね? なかなか積極な人ですね。池永さん、かっこいいからもてるんでしょうね。でもあの人、きれいなのにダメなんですね」

呆然と様子を見ていると、高橋さんと私の間に1枚の紙を持った堀田くんが話し掛けてきた。それに対して高橋さんが苦笑して返す。


「外見だけで決めれるものじゃないでしょ」

「まあ、そうですよね」

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