包み愛~あなたの胸で眠らせて~
いつまでも注目の的になりたくはないから、とりあえずこの場から早く去りたかった。

エレベーターで1階に降りて、重い足を踏み出すが、ここで思わぬ助けが入った。堀田くんの同期の人、二人がエントランスで話していて堀田くんを食事に誘ったのだ。

堀田くんは「ちょうど良かった」と躊躇うことなく誘いにのった。

私は、みんなに挨拶した。


「じゃ、私は帰ります」

「はい、お疲れ様でした!」


ホッとして先にオフィスを出る。

堀田くんが私を誘ったのには、深い意味はなかったのだろう。

たまたま同じように帰ろうとしていた私が目に入っただけのこと。それほど身構える必要はなかったかもしれないけど、あまりオフィス外で親しくはしたくない。

なんだか疲れた1日だった。

余計なことばかり考えてしまったからだけど。

マンションに着いて、奥にある広海くんの部屋を見る。もちろん彼はまだ帰っていない。あの部屋に一人で住んでいるのか、父親と住んでいるのかまだ確認していない。

中の様子は分からないけど、今部屋には誰もいないように思える。

家に入ると湊人がソファに座り、お行儀悪く足をテーブルにあげていた。
< 67 / 211 >

この作品をシェア

pagetop