包み愛~あなたの胸で眠らせて~
身を乗り出して、興味津々な目で見られても困る。

広海くんまでもが顎に手を当てて、私の答えを待っていた。この場でまさか自分が話題の中心になるとは微塵にも思っていなかった。

どうしてそんな話の流れになってしまったのだろうか。

答えを言うのに戸惑っていると「お待たせしましたー」と揚げたての唐揚げが届く。星野さんがすかさず取り分けるが、まだ注目されているのは私だ。

答えないといつまでたっても話は変わらない。


「喜怒哀楽がはっきりしている人でした。嬉しい時は嬉しいと言い、嫌なことがあると怒るという感じに自分を隠すことなく素直に見せる人」

「どうして別れたんですか?」

「私が自分を見せることが出来なかったから」

「振られちゃったんですか?」


星野さんの問いに首を横に振り、付き合っていた時の状況や別れた時の気持ちを話す。別れを切り出したのは私だった。だけど、その頃彼の心が離れていくのを感じていた。

私から言ったけど、言われる前に言った感じだ。彼はすんなり別れの言葉を受け入れて、どことなく安堵しているように見えた。
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