包み愛~あなたの胸で眠らせて~
きっと、君となら
爽やかに吹く風が気持ちいいなとマンションを出て、空を見上げる。

青空が広がっていて、太陽が眩しい。今日は夏日になる予報。少しの距離を歩くのでも紫外線が気になる季節だ。

日傘をさして、駅へと歩く。

「おーい、紗世ちゃーん」

5メートルほど進んだところで後ろから呼ばれた。振り返ると、右手をブンブンと振りながら走ってくる湊人がいた。

私が家を出るとき、湊人はまだパジャマ姿だった。外に出るため、急いで着替えたようだ。

Tシャツにスウェットパンツというラフな姿で私の前まで来る。


「どうしたの?」

「テーブルの下に落ちてた。これさ、ロッカーの鍵じゃない?」

「あ、ほんとだ。いつ落としたんだろう。鍵がないと困るとこだった。ありがとう」

「うん。気をつけて、行ってらっしゃい」


屈託ない笑顔で手を振り、見送ってくれる湊人に私も「行ってきます」と手を振り返した。

私たち姉弟は仲がいいと思う。

広海くんが恋人だと勘違いしても仕方ないかも。


「あ、おはようございまーす!」
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